今年の9月中旬、現社コース担当の谷川尚哉先生がヨーロッパで開かれた国際捕鯨委員会に行ってきました。
先生は地理学的な見地から、長年捕鯨問題を追いかけています。
では、谷川先生の報告を覗いてみましょう!
イメージ 1














国際会議場の会場入り口での谷川先生
=============================================
今年のIWC(国際捕鯨委員会)総会は、2014年9月15日から18日まで、スロベニア共和国のアドリア海に面した町ポルトロジュ(Portroz)(行政的にはピラン=Piranに属する)で開催されました。
イメージ 6
















IWC総会会場(開会式の直前の風景)

イメージ 2













スロベニアの首都リュブリャナ空港
イメージ 3













開催地は、スロベニアの海岸リゾート地ポルトロジュ
イメージ 4














石灰岩地質の山(石灰岩の地形を「カルスト地形」と呼びます。
そのカルストは、スロベニアの地域の名前からとりました)


2014年3月31日に、国際司法裁判所(ICJ)の判決が出ました。オーストラリアとニュージーランドが、日本の南氷洋での調査捕鯨を科学調査ではなく疑似商業捕鯨だと提訴したものでした。日本にとっては予想だにしなかった「敗訴」ではありました。そのような前提でのIWC総会でしたので、反捕鯨派の国々による持続的捕鯨派の国々に対する攻勢は強いものがありました。これは、久々に多数の日本のマスコミが取材に訪れたので、日本で報道された通りです。
イメージ 5













現地の地名の看板。左側がスロベニア語でポルトロジュ、右側がイタリア語でポルトロージェ。
ポルトロジュは行政的にはピラン市(町?)になる

結果的には、持続的捕鯨派と反捕鯨派の対立は、いつもどおりではありましたが、日本政府代表団のスタンスは、今までとは異なる「正攻法の戦い」をしたという点で、特筆すべき事であったと思います。

国際司法裁判所(ICJ)の判決も、調査捕鯨それ自体を否定しませんでしたし、調査のためにクジラを捕獲する(殺す)ことも否定していません。この2点は、オーストラリアの提訴の意図としては、どちらも判決で否定してほしかったところです。つまり、「敗訴」とは言いながらも、オーストラリアとニュージーランド両国の思惑通りにはいかなかったわけです。
イメージ 7













アドリア海に面したピランの街並み。海はきれい!
イメージ 8












スロベニアの自動車のナンバープレート。
左端のEUの星のマークの下のSLOがスロベニアの略記になる


日本は総会の場でも、新しい調査計画を立てて、2015年16年シーズンでは調査捕鯨を再開すると宣言しました。ちなみに、今冬の2014年15年シーズンは、目視調査のみを実施します。

今回の参加国(公式には63か国と言われた)では、なぜか、中国とインドが欠席でした。また、日本の応援団としては、捕鯨国であるノルウェー・アイスランド・ロシアの3か国に加えて、いつもながらのカリブの国々、アジア、アフリカの国々。今回、特に目立ったのは、韓国の全面的な応援です。日本では「嫌韓」感情が強まっていると言われますが、今年のIWCでは日韓関係は強固でした。一方で、反捕鯨国の側は、今回も、ブエノスアイレスグループ(中南米諸国)が大暴れです。オーストラリア、ニュージーランドも相変わらずで、彼らがジョイントしているので大変でした。加えて、USAにEU諸国ですから、持続的捕鯨派にとっては分が悪い状況が続いています。
イメージ 9













開会式の議長席。中央の女性が議長(カリブ海の国セントルシアの政府代表)。
その左の男性は、スロベニアの外務大臣

なお、前回のパナマ会議(2012)で選出された議長、ジェニン・コンプトン女史(セントルシア)の采配がすばらしかったです。ただ、議長は2年で交代なので、彼女は今回で議長を降りました。次回(2016)総会までの2年間は、スイスのコミッショナーが議長に選出されました。ちなみに、日本の森下丈二コミッショナー(政府代表)は、副議長に選出されました。
イメージ 10
















日本政府代表の森下コミッショナー(左)と水産庁の諸貫国際交渉官(右)